化学業界のサステナビリティ

約1年振りに戻ってまいりました。早速ですが、今回は化学業界のサステナビリティの最前線についてお話しできればと思います。化学といえば、素材産業ということで身の回りのもの全てに密接に結びついた業界の一つです。とりわけ、素材はものが生まれる1番初めの出発点となるので、バリューチェーン(製品ができるまでの一連の流れ)を通して、最も原料に起因するサステナビリティの影響が大きい分野でもあります。

そんな化学業界のサステナビリティの最前線を見ていきたいと思います。サステナビリティと一言で言っても、人権問題から生物多様性、労働環境、気候変動など様々ですが、このブログでは気候変動、リサイクルの観点を中心に取り上げていきたいと思います。

2024年に突入しましたが、多くの日系企業が掲げている温室効果ガス(GHG削減)の目標年である2030年までもう7年を切りました。目標達成のために新しいプロジェクトを立ち上げても効果が出る、本格導入までには実証実験なども考慮すると5年以上はかかることがほとんどですので、もうどのような施策で目標達成を実現するか具体的な計画がなくてはならない、そんな年にもなっています。そういった2−3年前よりも明らかに化学産業全体でも意識の変化が起きていることがわかります。大手石化メーカーなどではこれまでEHSなどに紐づけられていたサステナビリティという業務が独立し、専門のサステナビリティチームが誕生したり、LCA(ライフサイクルアセスメント)を算定するチーム、自社工場の排出量を削減する施策を考える専門チーム、サステナビリティレポートを毎年作成する部署、調達における購入原料のGHGを削減を目指すチームなど、よりスピードのギアを上げて目標達成に向けて動き出していることが見て取れます。ただ一方で、日本独特の周りの様子を見ながら進める文化や、明確なルールがない中では率先して進めたくないといった案替え方に縛られて思うように進められていない現実にも直面しています。特にサステナビリティに直接関わる部門と現場の営業や製造との間には大きな意識の差があることがうまくサステナビリティの取り組みが進んでいない最大の原因であると私は考えています。

あて、このような状況の中で化学業界の最前線はどこにあるのでしょうか?答えは皆さんの想像通り、欧州にあります。これまでのヒアリングしてきた中で分かったことは、最もサステナビリティの意識が高く規制やGHG削減のプロジェクト、ルールメイキングが進んでいるのは圧倒的に欧州です。これはグリーンディールの政策により、サステナビリティを欧州の経済発展につなげる重要な施策として考えられているところが大きいです。そして、次にサステナビリティの取り組みが進んでいる地域はどこでしょうか?アメリカでしょうか?確かにカリフォルニアなど一部の州では先進的な取り組みが行われていますが、それはあくまでほんの一握りの州でしかなく、ほとんど多くの州では施策がバラバラで、トランプ政権によるサステナビリティ離れが進んでしまっている州もかなり存在します。なかなか考え方の異なる州を横断した規制を導入することは容易くないのが現状です。では、欧州に次いでサステナビリティへの取り組みが進んでいる地域はどこになるのでしょうか?答えは、意外かと思われますが中国です。もちろん石炭化学の歴史があり、絶対的なGHG排出量では遅れているかもしれませんが、国として様々な規制や補助制度を次々と打ち出し、活動としては日本などよりも一歩進んでいる印象です。その後に東南アジア、日本、アメリカ、その他と続く感じでしょうか。もちろん、これはあくまで個人の主観ですので、そうではないといった意見もあるかと思いますが私のビジネスを通じて得た肌感覚です。また次回からもう少し詳しく見ていきたいと思います。今日はここまで。


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